形而上学 - 存在と実在をめぐる根本的問い

形而上学(Metaphysics)は、存在するものの究極的な本質と構造を問う哲学の最も根源的な分野である。「なぜ何もないのではなく、何かが存在するのか」「実在の根本的な構成要素は何か」「変化とは何か」といった問いは、哲学の始まり以来、思想家たちを魅了し続けてきた。

古代ギリシャでは、パルメニデスが「存在は存在し、非存在は存在しない」という存在論の根本命題を提起し、プラトンがイデア論によって可感的世界と可知的世界の二元論的存在論を展開した。アリストテレスは「存在としての存在を探究する学」として形而上学を定義し、実体(ウーシア)を中心概念とする存在論を体系化した。形相と質料、可能態と現実態、四原因説といったアリストテレスの概念装置は、以後の形而上学に決定的な影響を与えた。

中世では、普遍(善・美・人間性などの一般概念)が実在するか否かをめぐる普遍論争が展開された。実在論・唯名論・概念論の三つの立場が激しく対立し、この論争は存在論の根本問題として中世哲学を貫く主題となった。近世においては、デカルトが精神と物体(延長)の二実体論を提唱し、スピノザが唯一の実体としての神(自然)を措定する一元論を展開した。

カントは『純粋理性批判』において、伝統的形而上学が扱ってきた神・魂・世界全体は人間の認識能力を超えた物自体に属するとして、形而上学の限界を画定した。カント以後、ヘーゲルの絶対的観念論やハイデガーの基礎的存在論など、形而上学の再構築の試みが続けられている。現代の分析形而上学では、様相(可能性と必然性)、因果性、時間、同一性、自由意志などのテーマが精密な論理的手法で探究されている。